政府・日銀は経済立て直しにさらなる努力を
国内在住の著名エコノミスト、ロバート・フェルドマン・モルガン・スタンレーMUFG証券経済調査部長と菅野雅明JPモルガン証券チーフエコノミストは8日、日本経済新聞社が本社で開催した「NIKKEI.comセミナー」で、政府と日銀は景気回復とデフレ脱却に向け、さらなる対策を講じる必要があると語りました。
フェルドマン氏は金融政策と財政政策と構造改革の政策ミックスが重要で、日銀が今月5日に発表した(ゼロ金利を容認する)5兆円(約609億ドル)の追加的な金融緩和措置はデフレを終焉させるには不十分で、この10倍の資金が必要であると強調しました。
同氏の結論は、中央銀行単独では問題を解決することができず、より大胆な構造改革と財政政策が必要というものでした。
菅野氏も、日銀がデフレ克服のための手段を持ち合わせていないという点でフェルドマン氏に同調しました。
ただ、市場から金融資産を買い取るための基金創設は「ユニークな決定」で、「中央銀行は直接需要に働きかけようとはせずに、資産価格に影響を及ぼそうとしている」との見方を解説しました。また、20年以上続く資産価格の下落、とりわけ地価の下落が日本経済にとって主要な問題であると指摘しました。
菅野氏は日銀の政策は国債市場に新たなバブルを生成するもので、国債の保有を「きわめてリスクの高いもの」にしてしまうと警告。
円高は強み
さらに菅野氏は最近の円高について、(通貨の総合的な強さを表す)実質実効為替レートの図を示しながら、1980年以降の動きと比較すると現在はドルもユーロも円も、(通貨高でも通貨安でもない)中立的な水準に近いとの見方を示しました。
「(マクドナルドの)ビックマックの価格は東京でもニューヨークでもパリでも同じということです。」
円高は日本企業のグローバル展開を促進するため、「日本の輸出主導型のビジネスモデルを変えるきっかけになるかも知れない」と話しました。
一方、フェルドマン氏は新たな5兆円超の景気刺激策には批判的な見解を示しました。
同氏は1990年代に実施された一連の経済対策に言及しながら、「この種の政策パッケージはかつて自民党がやってきたのとまったく同じ。」
「より大胆な構造改革が必要」とフェルドマン氏は述べ、農業分野の生産性向上を含む、成長戦略に充てる予算が「きわめて少ない」点に言及しました。
菅野氏も、国内電力9社を例に挙げながら、効率性を高めるには日本国内でもグローバル・スタンダードでの競争が必要と述べました。外資系企業が日本で競争することを容認することで、「(市場では)異なるタイプの競争が始まり、勝者と敗者が容易にわかるようになる」と語りました。
2人のエコノミストは異なる職業の外国人参加者約70人とともに、幅広い問題について議論しました。
日本はどのくらいの数の移民を受け入れるべきかとの質問に対し、フェルドマン氏は今後15~20年の間に最低でも1,000万人は必要とし、中国人とインド人が日本で最も成功した移民グループになるだろうと回答しました。
菅野氏は、高齢者介護のように人員確保が喫緊の課題となっているいくつかの分野で移民が必要になると語りました。
さらに、容姿端麗の外国人が日本の低い出生率のカギを握るとのジョークを飛ばす場面もありました。
Lecturer

モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社マネージング・ディレクター経済調査部長
ロバート・アラン・フェルドマン氏
モルガン・スタンレーのグローバル・エコノミックス・チームの一員として、日本経済の見通しや金融市場動向及び政策動向の予測に従事。日本政府の経済研究委員会等に名を連ねるほか、日米友好基金(Japan-US Friendship Commission)の委員を務める。また、テレビ東京のビジネスニュース番組「ワールド・ビジネス・サテライト」にコメンテーターとしてレギュラー出演している。
1998 年にチーフ・エコノミストとしてモルガン・スタンレー証券会社(現:モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)に入社する前は、90-97年までソロモン・ブラザーズ・アジア証券で主席エコノミストを務めた。また、83-89年には国際通貨基金(IMF)のアジア部、欧州部、調査部に勤務。
マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号(専門は国際金融と開発学)。イエール大学では経済学と日本研究の学士号(BA)を取得した。卒業後、ニューヨーク連邦準備銀行、およびチェース・マンハッタン銀行に勤務した。
著書に「日本の金融市場:財政赤字、ジレンマ、および規制緩和」(MIT プレス、86年)、「日本の衰弱」(東洋経済新報社、96年)、「日本の再起」(東洋経済新報社、2001年)、「構造改革の先を読む」(東洋経済新報社、05年)、「一流アナリストの7つ道具」(プレジデント社、08年)がある。流暢な日本語を話し、「戦前の日本の経済成長」(中村隆英、イエール大学出版)を含む翻訳書(日本語から英語)も4冊出している。 70年、米国から交換留学生として初来日、名古屋で1年間過ごした後、野村総合研究所(73~74年)と日本銀行(81~82年)で研究業務に従事した。
JPモルガン証券株式会社経済調査部長、チーフ・エコノミスト、マネジング・ディレクター
菅野雅明氏
JPモルガン証券のチーフ・エコノミストとして、国内の金融経済分析および同予測を担当。専門は金融政策および景気循環論。
1974年日本銀行に入行し、国際局為替課調査役、秘書室兼政策委員会室調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長、同参事などを歴任。日本経済研究センター主任研究員(日銀より出向)を経て、99年J.P.モルガン入社。74年東京大学経済学部卒、79年にシカゴ大学大学院で経済学修士号を取得。
総務省統計審議会委員、内閣府統計制度改革検討委員会委員、財務省関税・外国為替等審議会専門委員、内閣府経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会金融・資本市場ワーキンググループメンバー、内閣府統計委員会国民経済部会統計委員会専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「週目点」「経済教室」、日経QUICK「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」など執筆多数。また、テレビ東京の「モーニングサテライト」にコメンテーターとしてレギュラー出演している。
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